施工事例は「家の事実」を並べるだけでは選ばれません。会社の強み・価値を込め、なぜその家づくりに至ったかのストーリー、写真一枚ごとの意図、住み心地の声まで入れると、あなたの会社の実績が”選ばれる理由”に変わります。
設備はメーカー名・商品名まで書いて検索に残し、施工事例を公開したらブログ・SNS・Googleマップ・LINEへ横展開して接点を増やします——これが工務店広報の施工事例の正しい見せ方です。
施工事例はたくさんある。写真もきれいに撮れている。なのに、ホームページに掲載できなかったり、掲載したとしてもそこから問い合わせに繋がらない——多くの工務店が、同じ手応えのなさを感じています。
実は、施工事例が効果的なものになるかどうかを分けるのは、写真の腕でも文章のうまさでもありません。「見せ方」です。
同じ家でも、見せ方ひとつで”ただの作業実績”にも、”この会社に頼みたい理由”にもなります。この記事では、工務店広報の伴走支援をしている「はぐくむ」が工務店向けの講座で伝えている施工事例づくりの考え方を、順を追って解説します。
この記事の内容は、動画でも解説しています。とくに「こだわりは特にないです」と言われたときの聞き方は、話しているところを見ていただいたほうが伝わるかもしれません。
工務店広報において、そもそも、なぜ施工事例が集客の主役なのか
結論からお伝えすると、家は高額で、一生に一度の失敗できない買い物だから、お客様は工務店選びに慎重になっていきます。工務店だけでなくリフォームでも同様です。
「家は三度建ててようやく自分のつくりたい家ができる」とは言いますが、三度も建てられる人はほぼいませんよね。
だからお客様は、カタログのスペックより「自分と似た人が、どう決めて、どう暮らしているか」を見て安心したいのです。これは心理学でいう社会的証明(人は他人の選択を判断のよりどころにする)そのものです。施工事例は、その「他人の決断」を見せられる唯一のコンテンツ。だからこそ、ただ作るのではなく、読む人が自分を重ねられるように見せることが重要になります。
まず全体像からです。施工事例1本に入れる項目は、この8つです。上から順に埋めていけば、そのまま1本の事例になります。
| 項目 | 何を書くか | よくある失敗 |
|---|---|---|
| ① タイトル | 地域名+工事内容+お客様のベネフィット | 「〇〇様邸 新築工事」で終わる |
| ② メイン写真 | その事例の価値が一枚で伝わるカット | とりあえず外観を置く |
| ③ 基本情報 | 物件種別・家族構成・床面積・施工エリア・工期 | 事例ごとに項目がバラバラ |
| ④ お客様の要望 | なぜ家づくり・リフォームに至ったか | 会社側の説明から書き始める |
| ⑤ 提案した内容 | 要望にどう応えたか、一緒に悩んだ過程 | 仕様の羅列になる |
| ⑥ 写真のキャプション | 一枚ごとに「なぜこうしたか」の意図 | 「キッチンです」 |
| ⑦ 住み心地の声 | 住んでから暮らしがどう変わったか | 「大満足です」で終わる |
| ⑧ 担当者の一言 | つくり手の想いと、引き渡し後の約束 | 定型の挨拶文を使い回す |
この8項目を、そのまま埋めるだけで1本仕上がる記入例つきのテンプレートは、こちらの記事にまとめました。
→ 施工事例のテンプレート完全版|そのまま埋める8項目と記入例【工務店・リフォーム】
事実だけでは物足りない!施工事例に「会社の強み・価値」を込める
施工事例を制作するうえで、家の情報(=事実)を伝えるのは大切ですが、それだけでは工務店広報のコンテンツとしては60点です。せっかく会社の顔になってもらうコンテンツなのですから、会社の強みや価値を一緒に伝えると、施工事例は格段に価値を届けられるようになります。
価値とは、たとえばこういうものです。
●高性能住宅であること
●素材へのこだわり
●設計力
●地域工務店ならではの安心感
●すぐ駆けつけてくれる
●その土地の寒さをよく知っている
●困りごとに寄り添って電話できる
●自社に職人がいるなら、その気の利いた仕事ぶり
●設計士とコラボした、おしゃれで機能的なデザイン
●価格高騰のなかでコスパの良い提案
●アフターサポートの手厚さ
などなど、これらが立派な価値として、「お金には替えられない価値」になっていきます。
では、なぜ施工事例ならこうした価値を自然に書けるのでしょうか。
それは実際に作った実績があり、会社の担当者がお客様と一緒に悩んだ、ひと筋縄ではいかない物語があるからです。
「予算とこだわりの間で迷った」「この土地だからこの間取りにした」——その悩んだ物語こそ、他社が真似できないあなたの会社だけのストーリーであり、文章に盛り込む価値があるものなのです。
す。
施工事例を作る前に必ず確認すること(許可・図面・プライバシー)

施工事例を取材する際、まず最初に取り組むことは販促利用の許可を得ることです。
家の設計図面は著作物としての権利がある場合があることや、防犯の面から慎重に扱ってください。また、ご家族のプライベートな情報は書きすぎないこと。
そしてもう一つ大切なのが「これは会社からの発信である」という視点です。ここを外すと、第三者が書いた取材記事のような、どこか他人事の文章になってしまいます。あくまで企業からの発信として、自社の想いと責任で書く——ここは、工務店の広報さんが仕切って、発信のトーンを揃えてください。
お施主様への掲載許可は、頼み方とタイミングを決めておくと断られにくくなります。許可書に入れる7項目と、そのまま使えるテンプレートはこちら。
→ 施工事例の掲載許可の取り方|断られない頼み方と、許可書に入れる7項目(テンプレートあり)
必ず入れたい基本情報

読む人が「自分ごと」にできる基本情報を記載していきます。これがないと、どれだけ良い家でも自分とは関係ない事例として流されてしまうから。
入れたいのは次の項目です。
施工内容として
●物件種別(木造2階建てなど)
●家族構成(ご夫婦+お子さま2人、夫婦2人など)
●床面積(〇㎡)
●施工エリア(◯◯県◯◯市など)
そして施工期間。新築では任意ですが、リフォームでは入れておくと親切です。例えば、「3月に引っ越したい」などスケジュールの縛りのある人がご自身で工期を逆算でき、「そろそろ問い合わせなきゃ」という行動のきっかけになります。
概要は「なぜ家づくりに至ったか」から書く
概要部分は、なぜその家づくりに至ったのか→お客様の要望→それに対する会社の提案、の順で書きます。
この「きっかけ→要望→提案」の流れがあることで、誰でも書くことができますし、事例をストーリーにすることができます。
読む人は、お客様の最初の悩みに自分を重ね、会社がどう応えたかを見て「ここなら分かってくれそう」と感じます。事実の箇条書きではなく、決断の物語として組み立ててください。
写真は一枚ずつ「意図」を説明する
写真には一枚ごとに、意図が伝わる説明文を添えます。
たとえば「なぜ対面キッチンにしたのか」などなど、プロが見ればすぐにわかる施工写真でも、読むのは一般の方です。プロには当たり前のことも、一般の人には伝わりません。だからこそ厭わず説明してあげてください。
そして、その説明文のなかに、御社の強み——性能のこと、自然素材のことなどを、少しずつ織り込んでいきます。「この会社のこういうところを好きになってほしいな」とイメージしながら書くのがコツです。
撮り方そのもの(スマホでの撮り方・撮るべき5場面・キャプションの文例)は、こちらの記事にまとめました。
→ 施工事例の写真の撮り方|スマホでOK・撮るべき5場面とキャプション文例
最後に「住み心地の声」と「担当者の一言」
可能であれば、お客様に住んでみた感想をインタビューして載せましょう。さらに担当したプランナーさんや設計士さんからの一言を添えると、お客様と会社の連携や良い関係が伝わります。
このひと手間が、信頼の決定打になります。第三者の声(お客様)と、つくり手の想い(担当者)が並ぶと、「この会社は引き渡したあとも繋がっている」と伝わるからです。
お客様の声と担当者コメントの文例(惜しい例と直した例)、本音を引き出す質問リストは、こちらの記事にまとめました。
→ 施工事例の例文集|お客様の声・担当者コメントの文例と、本音を引き出す質問
検索に強くする:設備はメーカー名・商品名まで書く

ここからはプラスアルファのテクニックになりますが、設備はメーカー名・商品名まで具体的に書きます。固有名詞で検索する人に届きやすくなるため。
お客様は「このキッチン、どこの?」と具体名で調べます。そこに言葉を残しておけば、ネット上であなたの事例が見つかる入り口が一つ増えていきます。「インターネット上に言葉を残す」という意識で、コツコツ積み上げて書いていきましょう!
あわせて、検索から見つけてもらうための土台が3つあります。
① タイトルに工事の中身を入れる。「◯◯様邸」だけで終わっていると、検索されている言葉と一致しません。「築30年 平屋 断熱リフォーム」のように、読者が実際に打ち込む言葉でタイトルをつけます。
② 説明を惜しまない。施工内容やお客様の声を具体的に書くほど、自然といろいろな言葉がページに含まれます。検索エンジンにとっても読者にとっても、分かりやすいページになります。
③ ビフォーアフターを載せる。変化が一目で伝わる写真は、読者がページに留まる時間を伸ばします。じっくり読まれているという事実は、そのページの価値として積み上がっていきます。
なお、この分野は「施工事例」と「施工実績」の2通りの呼び方があります。施工実績は件数や規模を示す響きがあり、施工事例は一件ごとの物語を指す響きがありますが、検索する人はどちらの言葉でも探しています。サイト内の表記はどちらかに統一しつつ、本文のなかに両方の言い方が自然に入っていると、取りこぼしが減ります。
施工事例を検索に乗せる工夫は、サイト全体のSEOとつながっています。地域で見つけてもらうための土台づくりは、工務店・リフォーム会社のSEO対策|地域で選ばれるローカルSEO3本柱に別途まとめました。
プライバシーは「施主の気持ち」で判断する
私たち、施工事例の制作者が最も気を付けていることをお伝えします。
家のことは家族情報に必ず関わるので、書きすぎないこと。
たとえば「体の不自由なおばあちゃんが、この先も安心して過ごせるように」と書いた方が、書き手としてはストーリーが作りやすいかもしれません。けれど、施主はそれを公開したくないかもしれない。
すごく片付けが苦手なお施主様がとにかく荷物を避けられるように収納を大きく作ったとする。でも、わざわざお施主様の苦手なことをストーリーに掲載しなくても良いことです。
そういった、「こう書いたら、少しでもネガティブな気持ちにならないだろうか?」というメタ認知、想像を働かせ、施主の気持ちになって、マイルドな表現に整えます。
書き手の都合より、施主の気持ちを優先する——これが信頼される会社の姿勢です。
施工事例を書く時間は「型」で半分になる|実測の時間配分
正直にお伝えすると、施工事例は30分では書けません…。私たちが実務で書いていて、現実的な時間はこのくらいです。
●トイレ交換などの小規模リフォーム:約2時間
●注文住宅の新築事例:4〜5時間
思ったよりかかる、と感じたでしょうか。でも、この数字には大事な意味があります。型がないまま書くと、この倍かかったうえに、途中で手が止まって「また今度」になりがちです。順番と枠が決まっていれば、時間が読めるようになります。
時間が読めれば、予定に組み込める。予定に組み込めれば、続く。施工事例が続く会社と止まる会社の差は、書く速さではなく、この見通しの差です。
<小規模リフォーム(約2時間)の内訳の目安>
●写真の整理と選定:15分。ビフォー・工事中・アフターから6〜8枚
→Andpadなどの施工管理システムを見て使える写真を選定する
●チェックリストの記入:25分。冒頭に説明した8項目に事実を埋めていく
(記入例つきのテンプレート記事を横に置いて埋めると、さらに迷いません)
| 項目 | 何を書くか |
|---|---|
| ① タイトル | 地域名+工事内容+お客様のベネフィット |
| ② メイン写真 | その事例の価値が一枚で伝わるカット |
| ③ 基本情報 | 物件種別・家族構成・床面積・施工エリア・工期 |
| ④ お客様の要望 | なぜ家づくり・リフォームに至ったか |
| ⑤ 提案した内容 | 要望にどう応えたか、一緒に悩んだ過程 |
| ⑥ 写真のキャプション | 一枚ごとに「なぜこうしたか」の意図 |
| ⑦ 住み心地の声 | 住んでから暮らしがどう変わったか |
| ⑧ 担当者の一言 | つくり手の想いと、引き渡し後の約束 |
●文章化:60分。「きっかけ→要望→提案」の順につなげる、Webサイトにアップ!
●見直し:20分。プライバシー表現、地名と固有名詞の確認
注文住宅はこの各工程が伸びます。特に写真選定と、お客様の要望を思い出す時間。だからこそ新築は、引き渡し直後の記憶が新しいうちに着手するのがおすすめですが、実際に取り組むのは事務のスタッフさんだったりするため、施工内容がわからないケースも・・・・。本当に!意外と時間がかかります。
施工事例を作ったら「横展開」で接点を増やす

施工事例は、作って終わりではなく、横展開して初めて力を発揮します。
まずブログで「ホームページの施工事例を更新しました」と告知し、SNS(インスタの投稿・ストーリー)で紹介、Googleマップにも公開、LINEでも配信。
面倒に感じるかもしれませんが、月1回の更新でも各チャンネルに配信すれば、1つの事例で接点が4回生まれます。

1年続ければ、ホームページは12ページ増え、接点はのべ48回。バズらなくて構いません。
コツコツ続けると決めることが大事です。続けるほどホームページは充実し、ネット上に言葉が残り、「この会社はちゃんと生きている」とユーザーに伝わります。発信のネタがない会社は、広報の観点では何も動けません。施工事例は、その尽きないネタ元になります。
すでに事例をたくさん載せているのに反響がない、という場合は、原因が5つに絞れます。載せているものを資産に変える直し方はこちら。
→ 施工事例が集客につながらない理由|載せているのに反響がないときの直し方
施工事例の取材を15年ほどお任せいただいている、住宅マーケティングのプロの評価です。「住宅のことを分かったうえで、現場で取材して書ける人は、本当に少ない」——なぜ工程まで分かって書く必要があるのか、発注する側の視点で語られています。
→ お客様の声|株式会社住宅ブランドコンサルティング様
よくある質問(FAQ)
まとめ

施工事例は、工務店にとって最大の資産のひとつです。家の記録ではなく、会社の価値とお客様の決断の物語として見せ、写真には意図を添え、設備は固有名詞まで書き、作ったら横展開で接点を増やす。この積み重ねが、同じ事例を”選ばれる理由”に変えていきます。バズらなくていい。続けることが、いちばんの差になります。
そのまま使える施工事例「 ヒアリングテンプレート」
施工事例を載せたいのに、取材で「何を聞けばいいか」が決まらない…
そんな経営者・広報担当者様へ
施工事例掲載許可書テンプレート
施工事例を載せたいのに、許可の取り方がわからない…
そんな工務店・リフォーム会社の社長様へ
そのまま使える「施工事例ヒアリングテンプレ」と「掲載許可書」を配布しています。自社で型を持ちたいなら育成へ、制作の手が足りないならアシスタントへ。「自社だけでは難しい」と感じたら、はぐくむでも施工事例を一緒に作っています(月1〜2件の更新で伴走する会社が多数です)。
【著者】高橋かずえ|はぐくむ株式会社 代表(2005年創業・住宅雑誌執筆実績あり)



