お客様の声の集め方|アンケートで本音が出ない理由と、頼み方・タイミング【工務店・リフォーム】

お客様の声
高橋かずえ
はぐくむ株式会社 代表取締役
2005年創業・住宅雑誌、住宅書籍の執筆実績あり。住宅会社(工務店・リフォーム・外壁塗装)に特化した広報支援をしています。

「お客様の声、うちも載せたいんですけど、なかなか集まらなくて」。工務店さんとお話ししていて、いちばんよく聞くお悩みのひとつです。

アンケート用紙は渡している。回収もできている。なのに、返ってくるのは「満足しています」「ありがとうございました」ばかり。そのまま載せても、他社のページと見分けがつかない——。

声が集まらないのは、お客様が非協力的だからではありません。集める仕組みが、声の出にくい形になっているだけです。この記事では、いつ・誰が・どう頼むかという「集め方の設計」と、そのまま使える依頼文をまとめました。

目次

アンケートで本音が出ないのは、当たり前のこと

「ご自由にお書きください」という白い欄を前にして、すらすら書ける人はほとんどいません。文章を書き慣れていないうえに、何を書けば喜ばれるのかも分からないからです。結果として、当たり障りのない一行が返ってきます。

もうひとつ大きいのが、記憶の問題です。人は、聞かれてはじめて思い出します。「引っ越して最初の冬、朝リビングが寒くなかった」という具体的な場面は、机に向かって思い出そうとしても出てきません。誰かに「住んでみて、いちばん変わったことは何ですか。例えば、暑い寒いの体感温度はいかがですか」と、具体的なポイントを聞かれた瞬間に、するっと出てくるものです。

つまり、いい声を集めたいなら、書いてもらうのではなく、聞きに行く。ここが出発点になります。

集め方は3種類。ハードル順に選ぶ

方法向いている場面取得できる情報量
アンケート用紙・フォーム小規模リフォーム、件数が多い工事少な目
引き渡し時の立ち話メモすべての工事。いちばん手軽少なめ(落ち着いて話を聞かない限り、具体的な話題に触れるのは難しい)
インタビュー(30〜60分)新築・大規模リノベ、大きく紹介したい見本となる事例充実した情報量になる(記事1本になる)

全部をインタビューにする必要はありません。件数の多い工事は用紙で広く、大きく紹介したい見本となる事例だけインタビューで深く。この使い分けが現実的です。

ただし、用紙だけで終わらせないでください。おすすめは、用紙を渡したうえで、引き渡しの雑談で1つだけ質問すること。「住んでみて、いちばん変わったことって何ですか」。この一問だけで、用紙には絶対に書かれない一行が手に入ります。

お客様の声が集まらない本当の理由は、「頼めない」こと

ところがアンケートの設計や質問の仕方の前に、もっと手前でつまずいている会社がほとんどです。そもそも、お客様にお願いできない。頼めないから、話を聞く機会そのものが生まれません。

引き渡しが終わってから「声をいただけませんか」と切り出すのは、担当者にとってかなり勇気のいることです。お客様に手間をかけさせる後ろめたさもあるし、断られたらどうしようという気持ちもある。

だから後回しになり、時間が経つほどさらに言い出しにくくなります。はぐくむでは、1,000人以上のお客様に話を聞いてきて、声が集まらない会社に共通していたのは、聞き方の問題ではなく、この「頼めない」でした。

提案の段階で、先に頼んでおく

いちばん効くのは、契約前の提案の段階で、先にお願いしておくことです。

「自慢の家づくりになりますから、完成したらぜひ取材に出てください」
「こういうリノベーションをしたい方が多いので、工事が終わったら写真とともにいろいろお話を聞かせてください」

このひと言を、プランを出すときに添えておく。それだけで、完成後の取材は「急に頼まれたお願い」ではなく「最初から決まっていた約束」になります。頼む側の後ろめたさが消え、お客様のほうも心の準備ができています。

お客様にとっても、自分の家づくりが誰かの参考になるという話は、負担ではなく誇りです。

まだ完成していない段階で「取材に出てほしい」と言われるのは、この家づくりに自信を持ってくれているという意味にもなるのです。関係がいちばん前向きな時期に頼んでおくのが、もっとも自然な形です。

それでも言い出せなかったら、値引きの話が出たとき

提案の段階で言いそびれてしまったら、もうひとつ機会があります。値引きの交渉が入ったときです。

「その分、完成後の取材と掲載にご協力いただけますか」と、交換条件として出す。値引きを一方的に受けるより、お互いに差し出すものがある形のほうが、関係は対等になります。お客様にとって取材への協力は大きな負担ではなく、会社にとっては値引き分よりずっと長く働いてくれる広報の資産です。

お客様の声は、完成後に「もらいに行く」ものではなく、最初に「約束しておく」もの。頼み方の型より先に、頼むタイミングを前に動かしてください。

タイミングは2回。直後と、3ヶ月後

声をもらうタイミングには、それぞれ取れるものが違います。

引き渡し直後は、感動の言葉が取れます。「思っていた以上でした」「打ち合わせが楽しかった」。工事のプロセスへの評価が中心です。

住んで1〜3ヶ月後は、暮らしの変化が取れます。「洗濯動線が変わって、朝が15分早くなった」。検討中の人がいちばん知りたいのは、実はこちらです。

理想は両方。難しければ、3ヶ月後の一本に絞ってください。点検やアフター連絡のついでに聞けるので、負担も少なくて済みます。

「特にありません」と言われたときの、たったひとつの切り返し

聞きに行くと決めても、最初の壁がここです。「何かご感想はありますか」「……特にないですね」。

これは、お客様が冷たいわけでも、工事に不満があるわけでもありません。質問が抽象的すぎるだけです。人は、抽象的に聞かれると抽象的にしか答えられません。

切り返し方は、ひとつだけ覚えておけば足ります。写真を、一緒に見ることです。

引き渡しのときでも、あとから伺うときでも構いません。工事中と完成後の写真をタブレットやスマホで開いて、お客様と一緒にスクロールしながら見ていきます。そして目に留まったところで手を止めて、こう聞きます。「ここ、どうしてこの形にされたんですか」。

さっきまで「特にない」と言っていた方が、ここから止まらなくなります。写真という具体物があると、記憶が引き出されるからです。取材の現場で毎回やっていることですが、特別な技術ではありません。写真を開いて、一緒に見る。それだけです。

聞き方を変えるだけで、返ってくる言葉が変わる

  • 「ご満足いただけましたか」→「はい」で終わります。かわりに「住んでみて、いちばん変わったことは何ですか」
  • 「ご感想をご自由にどうぞ」→ 何を書けばいいか分かりません。かわりに「工事の前、いちばん困っていたのはどこでしたか」
  • 「うちに決めた理由は何ですか」→「なんとなく」で終わりがちです。かわりに「他社さんもご覧になりましたか。そのとき、うちのどこが違って見えましたか」

いい声が集まらないのは、お客様のせいでも、聞く人が話し下手だからでもありません。質問の形の問題です。ここは変えられます。

そのまま使える、依頼の言い方と文例

引き渡しの場で口頭で頼むとき

「これから家づくりを考える方に、実際に建てた方の声がいちばん参考になるんです。よければ、住んでみてどうだったか、あとで少しだけ聞かせていただけませんか。5分で終わります」

ポイントは、目的(誰の役に立つのか)と、所要時間を先に伝えることです。「5分だけ」と言われると、人は身構えません。

メール・LINEで依頼するとき

件名:お住まいの感想を、少しだけ聞かせてください

本文:「その後、お住まいの調子はいかがでしょうか。実は、これから家づくりを検討される方に向けて、実際に住まれている方の声をご紹介しています。◯◯様のお話は、同じように悩んでいる方の助けになると思っています。3つだけ質問させてください。お返事は一言ずつで大丈夫です」

依頼文で効くのは、「あなたの話が誰かの役に立つ」という一文です。人は、自分のためのお願いより、誰かのためのお願いに応えたくなります。そして「一言ずつで大丈夫」は、書けない人の心の負担を下げる魔法の言葉です。

質問は3つまでに絞る

メールで7問も送ると、返信率は一気に落ちます。文字でもらうときは3問が上限です。

① 依頼するきっかけは何でしたか ② 決め手になったのはどこですか ③ 住んでみて、いちばん変わったことは何ですか

対話で聞ける場合はもっと踏み込めます。質問リストの全体像は、こちらにまとめました。
施工事例の例文集|お客様の声・担当者コメントの文例と、本音を引き出す質問

回収率を上げる、3つの小さな工夫

渡すタイミングを分ける。アンケートは工事完了時に「予告」して、引き渡し時に手渡します。突然渡されるより、断然返ってきます。

選択式+自由記入1問にする。全部自由記入だと手が止まります。満足度や決め手は選択式で、最後の1問だけ「住んでみて変わったこと」を自由記入に。

その場で書いてもらう。持ち帰りは戻ってきません。引き渡し時の5分、その場で。書きにくそうなら、聞き取ってこちらが書いても構いません。

掲載の許可も、この流れの中で一緒にお願いすると自然です。頼み方と許可書の項目はこちら。
施工事例の掲載許可の取り方|断られない頼み方と、許可書に入れる7項目

集めた声は、どこに置くか

集めた声を「お客様の声」ページにまとめて置くだけでは、実はもったいない使い方です。読者は、迷っている場面でこそ声を求めます。

施工事例の記事の中、料金ページ、問い合わせフォームの直前。この3ヶ所に短い声を置くと、「自分と同じ人がここを選んだ」という安心が、最後のひと押しになります。

声を1本の記事に育てる手順は、こちらで解説しています。
お客様インタビューの作り方

よくある質問(FAQ)

Q. 謝礼は必要ですか?

A. 用紙や引き渡し時の立ち話なら不要です。ただし、インタビューのようにお客様の時間をいただく場合は、お礼を形にしてください。お掃除をして待っていてくださる方もいます。目安は、1時間の拘束でクオカード5,000円分ほど。あわせて完成写真のデータや掲載ページの印刷をお渡しすると、記念として喜ばれます。

Q. ネガティブな声が返ってきたら?

A. 掲載しなくて構いませんが、社内では必ず共有してください。改善のいちばんの材料です。また、小さな不満と、それにどう対応したかをセットで載せると、かえって信頼される場合もあります。

Q. 昔のお客様に今から聞いてもいい?

A. 大丈夫です。「あのときの工事のこと、覚えていてくれたんですね」と喜ばれることが多く、点検やリフォームの相談につながることもあります。

写真を一緒に見ながら聞くために、ビフォーアフターをどう撮って揃えておくかはこちら。
ビフォーアフターの見せ方|リフォーム事例が伝わる撮り方と並べ方

まとめ

お客様の声が集まらないのは、熱意の問題ではなく設計の問題です。用紙で広く、見本となる事例は聞きに行く。タイミングは直後と3ヶ月後。依頼文には「誰かの役に立つ」と「一言で大丈夫」を入れる。この3つを決めておくだけで、集まる声の量も濃さも変わります。

集めた声を記事に組み立てる手順はこちら。
施工事例の書き方|工務店が「選ばれる理由」まで伝える構成

取材で何を聞けばいいかがわかるシートを無料配布しています。
施工事例ヒアリングテンプレート(無料)

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この記事を書いた人

高橋 かずえのアバター 高橋 かずえ 代表取締役

はぐくむ株式会社 代表取締役 高橋かずえ|2005年創業。工務店やリフォーム会社の「伝える」を、22年支えてきました。

住宅業界を専門にするインタビューライターとして、そして工務店・リフォーム会社の広報を支援する伴走者として活動しています。2005年に独立し、「はぐくむ」を立ち上げました。以来、経営者・職人・現場監督、そして家を建てたお施主様まで、これまでにインタビューをした方は1,000人を超えます(導入事例、お客様の声、採用、経営者インタビューなど)。住宅そのものの取材は500件以上になりました。

住宅雑誌への執筆から、街の工務店さんの広報媒体、ハウスメーカーの制作物まで、幅広く手がけています。

kazue(at)hug-kumu.com  ※(at) を@に直してご連絡ください。 

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