工務店の独自性を見つける5つの質問|「うちには特徴がない」と思う社長様たちへ

高橋かずえ
はぐくむ株式会社 代表取締役
2005年創業・住宅雑誌、住宅書籍の執筆実績あり。住宅会社(工務店・リフォーム・外壁塗装)に特化した広報支援をしています。

「うちには、特にこれといった特徴がないんですよ。探さなくちゃ…」

工務店やリフォーム会社の社長さんと発信のご相談を始めるとき、いちばんよく聞く言葉です。

でも、そのあと1時間お話を伺うと、ほぼ必ず出てきます。 例外はほとんどありません。

強みは「ない」のではなく、「言葉になっていない」だけだなって思います。 この記事では、社長ご自身が答えるだけで自社の独自性が言葉になる、5つの質問を紹介します。

目次

なぜ、社長ご自身では見つからないのか

理由は3つあります。現場を知り尽くしている社長ほど、この3つにはまりやすくなります。

① 毎日やっていることは、特別に見えない

人は、自分が当たり前にやっていることを強みだと思えません。

打ち合わせのたびに手書きのスケッチを描いている。引き渡しの半年後に、もう一度顔を出している。契約前に、他社の見積もりも一緒に見てあげている…。

社長にとっては「普通のこと」かもしれませんよね。 でも、他社は行っているでしょうか。もし他社がやっていないのなら、それが御社の強みになります。

② 比べる相手を間違えている

「うちには強みがない」とおっしゃる社長は、ひょっとしたら大手さんと比べていまませんか?

資本力、広告量、モデルハウスの数。そこと比べれば、地域工務店・地場に密着したリフォーム業者さんは勝ちにくいかもしれません。でも、お客様が実際に比べているのは、大手さんでしょうか。多くは同じくらいの規模の3社です。その3社の中でなら、違いははっきりあるはずです。

③ 強みを「具体的な行動」で探していない

「高品質」「安心」「お客様第一」。こういう言葉を探そうとすると、どの会社にも当てはまる言葉になるので、「強み」とは言いにくいです。

強みは、きれいな言葉ではなく具体的な行動で考えると探しやすいです。「お客様第一」ではなく「予算が合わないときは、先に正直に言う」や、「地域密着だから30分以内に駆けつける」など。お客様に伝わりやすいのは、これまでとってきた行動です。

では次に、強味を探すためにはぐくむ(自社)が行っている「5つの質問」をご紹介します!

独自性を見つける5つの質問

次の5つに、社長ご自身で答えてみてください。紙に書いても、スマホに話して録音してもかまいません。答えを急がず、具体的な場面がひとつ思い浮かぶまで考えてみてください。

質問1|最近いちばん喜ばれたのは、どんなことでしたか

「満足していただいています」ではなく、具体的な一件を思い出してください。

誰が、何を喜んだのか。そのとき自分たちは何をしたのか。喜ばれた理由の中に、強みが入っています。

質問2|他社だったら、たぶんやらないことは何ですか

これが取材をしていていちばん「なるほど!」と思う質問です。

「うちの強みは何か」と考えると、人はつい立派なことを言おうとします。でも「他社がやらないこと」と考えると、実際にやっている面倒なことを思い出します。

  • 契約前に3回も図面を引き直す
  • 現場に毎日写真を撮りに行く
  • 引き渡しのあとも、年1回点検に行く
  • 職人さんたちとのコミュニケーションを欠かさない

面倒だからやらない会社が多いこと…そういうことが強みになります。

質問3|断ったお客様は、どんな方でしたか

意外に思われるかもしれませんが、断った相手に、その会社のこだわりが出ます。

「予算だけで決めたい方はお断りしました」「工期を縮めろと言われて、無理だと伝えました」。

何を断るかは、何を大事にしているかと同じことです。 そして、ここで出てきた基準は、そのまま発信に使えます。「こういう方には向きません」と言い切れる会社は発信にも軸が出てきます。

質問4|お客様から、よく聞かれることは何ですか

商談や打ち合わせで、毎回聞かれる質問が3つくらいあるはずです。

その質問は、お客様が不安に思っていることです。 そして、それに毎回答えてきたなら、答えが社内にたまっています。

よく聞かれることに、ちゃんと答えられる。これも強みです。 しかも、そのまま記事になります。

質問5|なぜ、その仕様にしているんですか

ここがいちばん会社の思想とつながるところです。

使っている断熱材、窓、木材。それを選んだ理由を振り返ると、会社の考え方が出てきます。

「前にこういう失敗があって」「寒い家をたくさん見てきたから」。理由には必ず経験が入っています。そして理由は、他社には真似できません。 同じ材料は仕入れられますが、選んだ理由は会社独自のもの。ぜひ理由を考えてみて。

答えが出てこないときの4つのコツ

質問に向き合っても、「やっぱり特にないな」で止まってしまうことがあります。そんなときに試してほしいのが、次の4つです。私が取材で実際にやっていることで、2026年5月〜8月に録った取材音声11本を聞き返して確かめました。

コツ1|「〜だけです」と口にしたら、そこが強み

強みは、たいてい「〜だけです」という言い方と一緒に出てきます。

「現場の写真を、毎日撮っているだけです」「お客さんに、先に言っておくだけですね」。

聞き返した11本のうち、9本でこの言い方が出ていました。本人が価値だと思っていない仕事は、ほぼこの語尾になります。 ご自分の答えに「だけ」が混ざっていたら、そこに印をつけて、「いつから」「なぜ始めたか」を書き足してみてください。

コツ2|施工写真を見ながら答える

「こだわりは何ですか」と聞かれると、「特にないです」と答えたくなります。でも施工写真を1枚ずつ見ながら「この窓、なぜここにしたんだっけ」と考えると、話が止まらなくなります。

人は抽象的な質問には答えにくくても、目の前のモノのことなら話せます。 5つの質問も、自社の施工事例をスクロールしながら答えると、出てくる量がまったく違います。

見返してみて「写真を並べているだけだな」と感じたら、こちらも参考にしてください。→ 施工事例が集客につながらない理由|載せているのに反響がないときの直し方

コツ3|「うちには何もない」と思ったら、その先を続ける

取材でも、「うちには、語るようなことは何もないんですけど……」という前置きのあとに、いちばんいい話が出てきます。11本中7本がそうでした。(みんな謙遜するんですよ…!!)

予防線を張ると、気が楽になるのだと思います。「何もないけど」と思ったら、そこで止めずに「強いて言えば」と続けてみてください。 ひとりで難しければ、社員さんやご家族に聞き役を頼むのも効きます。

コツ4|「そういえば」を聞き逃さない

取材では、本題が終わって片づけを始めたころに、「そういえば」「強いて言うなら」と、準備していなかった話が出てきます。私はこれを「取材の余熱」と呼んでいます。

準備した答えは、どの会社も似てきます。その会社らしさが出るのは、準備していない言葉のほうです。 社員さんに聞いてもらうなら、録音は最後の雑談まで止めないでおくのがおすすめです。録音することは、最初に伝えておいてください。

4つに共通すること

どれも「うまく答えなきゃ」という力みを抜くための工夫です。人は緊張がほどけてはじめて、準備していない言葉を話します。強みを言葉にするのに大事なのは、立派な答えを考えることより、気楽に話せる場をつくることです。

取材の現場でのやりとりは、noteにも書いています。→ note「取材で広報を強くする人」

出てきた言葉を、どう整えるか

出てきた話は、そのままでは使えません。3段階に整えます。

段階例
出てきた話「予算が合わないときは、早めに正直に言うようにしてます」
行動として書く契約前に、予算が合わないことを先に伝える
お客様の得として書くあとで「こんなに高くなるとは」が起きない

最後の形だけが、お客様に届きます。 行動のままだと「ふーん」で終わりますが、自分の得に変換されると刺さります。

強みが言葉になると、会社の何が変わるか

問い合わせの数より先に、問い合わせの質が変わります。

家づくりやリフォームは高額で、何か月も一緒に進める仕事です。合わないお客様が来ると、双方が苦しくなります。値引きの話が終わらない、仕様変更が止まらない、言った言わないになる。一度は経験があるのではないでしょうか。

自社の考え方を先に出しておくと、ここが変わります。

  • 考え方を書く → 合わない人は問い合わせてこない
  • 断る基準を書く → 最初から話が早い
  • 理由を書く → 値段だけで比べられにくくなる

強みを言葉にする目的は、集客ではありません。 先に価値観が合う人だけに来てもらうことです。

「ファンになってもらう」とよく言いますが、ファンとは好きになってくれた人ではなく、先に価値観が合うと分かった人だと思っています。だから、最初から対等に話せます。

相見積もりで価格だけを比べられないための考え方は、こちらにまとめています。→ 工務店・リフォーム会社のブランディング|もう相見積もりで迷わない。自社の「らしさ」が宝物になる理由

言葉にしたあと、どこに置くか

見つけた強みは、会社案内に一度書いて終わりにしないでください。

  • 施工事例の中で、なぜその仕様にしたのかを毎回書く
  • よく聞かれる質問に、1本ずつ記事で答える
  • お客様に「なぜうちを選んだか」を聞いて、記事にする

施工事例での書き方は → 工務店広報がつくる施工事例|“選ばれる理由”に変える施工事例の作り方

記事のネタの広げ方は → 工務店ブログのネタが尽きない|30のネタ出しフレームワーク

3つめがいちばん強いです。 社長が自分で「うちの強みは○○です」と言うより、お客様に言ってもらったほうが伝わります。聞き方は別の記事に書きました。

→ お施主様インタビューの質問リスト20|「決め手」を引き出す聞き方と順番

まとめ

「うちには特徴がない」と感じるのは、強みがないからではありません。毎日あたりまえにやっていることほど、自分では見えにくいだけです。

5つの質問のなかで、まず試してほしいのは「他社だったら、たぶんやらないことは何ですか」です。答えに「〜だけです」という言い方が出てきたら、そこに印をつけてください。断ったお客様の話や、仕様を選んだ理由にも、その会社の芯が出ます。

出てきた言葉は、行動として書き、お客様の得として書き直すと、読む人に届きます。目的は問い合わせの数を増やすことではなく、価値観の合うお客様の割合を上げることです。そうなれば、値引きや「言った言わない」で消耗する商談が減り、最初から対等に話せるお客様と家づくりができるようになります。

まずは今日、自社の施工写真を1枚開いて、「なぜこうしたんだっけ」と考えるところから始めてみてください。

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この記事を書いた人

高橋 かずえのアバター 高橋 かずえ 代表取締役

はぐくむ株式会社 代表取締役 高橋かずえ|2005年創業。工務店やリフォーム会社の「伝える」を、22年支えてきました。

住宅業界を専門にするインタビューライターとして、そして工務店・リフォーム会社の広報を支援する伴走者として活動しています。2005年に独立し、「はぐくむ」を立ち上げました。以来、経営者・職人・現場監督、そして家を建てたお施主様まで、これまでにインタビューをした方は1,000人を超えます(導入事例、お客様の声、採用、経営者インタビューなど)。住宅そのものの取材は500件以上になりました。

住宅雑誌への執筆から、街の工務店さんの広報媒体、ハウスメーカーの制作物まで、幅広く手がけています。

kazue(at)hug-kumu.com  ※(at) を@に直してご連絡ください。 

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