「うちには、特にこれといった特徴がないんですよ。探さなくちゃ…」
工務店やリフォーム会社の社長さんと発信のご相談を始めるとき、いちばんよく聞く言葉です。
でも、そのあと1時間お話を伺うと、ほぼ必ず出てきます。 例外はほとんどありません。
強みは「ない」のではなく、「言葉になっていない」だけだなって思います。 この記事では、社長ご自身が答えるだけで自社の独自性が言葉になる、5つの質問を紹介します。
なぜ、社長ご自身では見つからないのか
理由は3つあります。現場を知り尽くしている社長ほど、この3つにはまりやすくなります。
① 毎日やっていることは、特別に見えない
人は、自分が当たり前にやっていることを強みだと思えません。
打ち合わせのたびに手書きのスケッチを描いている。引き渡しの半年後に、もう一度顔を出している。契約前に、他社の見積もりも一緒に見てあげている…。
社長にとっては「普通のこと」かもしれませんよね。 でも、他社は行っているでしょうか。もし他社がやっていないのなら、それが御社の強みになります。
② 比べる相手を間違えている
「うちには強みがない」とおっしゃる社長は、ひょっとしたら大手さんと比べていまませんか?
資本力、広告量、モデルハウスの数。そこと比べれば、地域工務店・地場に密着したリフォーム業者さんは勝ちにくいかもしれません。でも、お客様が実際に比べているのは、大手さんでしょうか。多くは同じくらいの規模の3社です。その3社の中でなら、違いははっきりあるはずです。
③ 強みを「具体的な行動」で探していない
「高品質」「安心」「お客様第一」。こういう言葉を探そうとすると、どの会社にも当てはまる言葉になるので、「強み」とは言いにくいです。
強みは、きれいな言葉ではなく具体的な行動で考えると探しやすいです。「お客様第一」ではなく「予算が合わないときは、先に正直に言う」や、「地域密着だから30分以内に駆けつける」など。お客様に伝わりやすいのは、これまでとってきた行動です。
では次に、強味を探すためにはぐくむ(自社)が行っている「5つの質問」をご紹介します!
独自性を見つける5つの質問
次の5つに、社長ご自身で答えてみてください。紙に書いても、スマホに話して録音してもかまいません。答えを急がず、具体的な場面がひとつ思い浮かぶまで考えてみてください。
質問1|最近いちばん喜ばれたのは、どんなことでしたか
「満足していただいています」ではなく、具体的な一件を思い出してください。
誰が、何を喜んだのか。そのとき自分たちは何をしたのか。喜ばれた理由の中に、強みが入っています。
質問2|他社だったら、たぶんやらないことは何ですか
これが取材をしていていちばん「なるほど!」と思う質問です。
「うちの強みは何か」と考えると、人はつい立派なことを言おうとします。でも「他社がやらないこと」と考えると、実際にやっている面倒なことを思い出します。
- 契約前に3回も図面を引き直す
- 現場に毎日写真を撮りに行く
- 引き渡しのあとも、年1回点検に行く
- 職人さんたちとのコミュニケーションを欠かさない
面倒だからやらない会社が多いこと…そういうことが強みになります。
質問3|断ったお客様は、どんな方でしたか
意外に思われるかもしれませんが、断った相手に、その会社のこだわりが出ます。
「予算だけで決めたい方はお断りしました」「工期を縮めろと言われて、無理だと伝えました」。
何を断るかは、何を大事にしているかと同じことです。 そして、ここで出てきた基準は、そのまま発信に使えます。「こういう方には向きません」と言い切れる会社は発信にも軸が出てきます。
質問4|お客様から、よく聞かれることは何ですか
商談や打ち合わせで、毎回聞かれる質問が3つくらいあるはずです。
その質問は、お客様が不安に思っていることです。 そして、それに毎回答えてきたなら、答えが社内にたまっています。
よく聞かれることに、ちゃんと答えられる。これも強みです。 しかも、そのまま記事になります。
質問5|なぜ、その仕様にしているんですか
ここがいちばん会社の思想とつながるところです。
使っている断熱材、窓、木材。それを選んだ理由を振り返ると、会社の考え方が出てきます。
「前にこういう失敗があって」「寒い家をたくさん見てきたから」。理由には必ず経験が入っています。そして理由は、他社には真似できません。 同じ材料は仕入れられますが、選んだ理由は会社独自のもの。ぜひ理由を考えてみて。
答えが出てこないときの4つのコツ
質問に向き合っても、「やっぱり特にないな」で止まってしまうことがあります。そんなときに試してほしいのが、次の4つです。私が取材で実際にやっていることで、2026年5月〜8月に録った取材音声11本を聞き返して確かめました。
コツ1|「〜だけです」と口にしたら、そこが強み
強みは、たいてい「〜だけです」という言い方と一緒に出てきます。
「現場の写真を、毎日撮っているだけです」「お客さんに、先に言っておくだけですね」。
聞き返した11本のうち、9本でこの言い方が出ていました。本人が価値だと思っていない仕事は、ほぼこの語尾になります。 ご自分の答えに「だけ」が混ざっていたら、そこに印をつけて、「いつから」「なぜ始めたか」を書き足してみてください。
コツ2|施工写真を見ながら答える
「こだわりは何ですか」と聞かれると、「特にないです」と答えたくなります。でも施工写真を1枚ずつ見ながら「この窓、なぜここにしたんだっけ」と考えると、話が止まらなくなります。
人は抽象的な質問には答えにくくても、目の前のモノのことなら話せます。 5つの質問も、自社の施工事例をスクロールしながら答えると、出てくる量がまったく違います。
見返してみて「写真を並べているだけだな」と感じたら、こちらも参考にしてください。→ 施工事例が集客につながらない理由|載せているのに反響がないときの直し方
コツ3|「うちには何もない」と思ったら、その先を続ける
取材でも、「うちには、語るようなことは何もないんですけど……」という前置きのあとに、いちばんいい話が出てきます。11本中7本がそうでした。(みんな謙遜するんですよ…!!)
予防線を張ると、気が楽になるのだと思います。「何もないけど」と思ったら、そこで止めずに「強いて言えば」と続けてみてください。 ひとりで難しければ、社員さんやご家族に聞き役を頼むのも効きます。
コツ4|「そういえば」を聞き逃さない
取材では、本題が終わって片づけを始めたころに、「そういえば」「強いて言うなら」と、準備していなかった話が出てきます。私はこれを「取材の余熱」と呼んでいます。
準備した答えは、どの会社も似てきます。その会社らしさが出るのは、準備していない言葉のほうです。 社員さんに聞いてもらうなら、録音は最後の雑談まで止めないでおくのがおすすめです。録音することは、最初に伝えておいてください。
4つに共通すること
どれも「うまく答えなきゃ」という力みを抜くための工夫です。人は緊張がほどけてはじめて、準備していない言葉を話します。強みを言葉にするのに大事なのは、立派な答えを考えることより、気楽に話せる場をつくることです。
取材の現場でのやりとりは、noteにも書いています。→ note「取材で広報を強くする人」
出てきた言葉を、どう整えるか
出てきた話は、そのままでは使えません。3段階に整えます。
| 段階 | 例 |
|---|---|
| 出てきた話 | 「予算が合わないときは、早めに正直に言うようにしてます」 |
| 行動として書く | 契約前に、予算が合わないことを先に伝える |
| お客様の得として書く | あとで「こんなに高くなるとは」が起きない |
最後の形だけが、お客様に届きます。 行動のままだと「ふーん」で終わりますが、自分の得に変換されると刺さります。
強みが言葉になると、会社の何が変わるか
問い合わせの数より先に、問い合わせの質が変わります。
家づくりやリフォームは高額で、何か月も一緒に進める仕事です。合わないお客様が来ると、双方が苦しくなります。値引きの話が終わらない、仕様変更が止まらない、言った言わないになる。一度は経験があるのではないでしょうか。
自社の考え方を先に出しておくと、ここが変わります。
- 考え方を書く → 合わない人は問い合わせてこない
- 断る基準を書く → 最初から話が早い
- 理由を書く → 値段だけで比べられにくくなる
強みを言葉にする目的は、集客ではありません。 先に価値観が合う人だけに来てもらうことです。
「ファンになってもらう」とよく言いますが、ファンとは好きになってくれた人ではなく、先に価値観が合うと分かった人だと思っています。だから、最初から対等に話せます。
相見積もりで価格だけを比べられないための考え方は、こちらにまとめています。→ 工務店・リフォーム会社のブランディング|もう相見積もりで迷わない。自社の「らしさ」が宝物になる理由
言葉にしたあと、どこに置くか
見つけた強みは、会社案内に一度書いて終わりにしないでください。
- 施工事例の中で、なぜその仕様にしたのかを毎回書く
- よく聞かれる質問に、1本ずつ記事で答える
- お客様に「なぜうちを選んだか」を聞いて、記事にする
施工事例での書き方は → 工務店広報がつくる施工事例|“選ばれる理由”に変える施工事例の作り方
記事のネタの広げ方は → 工務店ブログのネタが尽きない|30のネタ出しフレームワーク
3つめがいちばん強いです。 社長が自分で「うちの強みは○○です」と言うより、お客様に言ってもらったほうが伝わります。聞き方は別の記事に書きました。
→ お施主様インタビューの質問リスト20|「決め手」を引き出す聞き方と順番
まとめ
「うちには特徴がない」と感じるのは、強みがないからではありません。毎日あたりまえにやっていることほど、自分では見えにくいだけです。
5つの質問のなかで、まず試してほしいのは「他社だったら、たぶんやらないことは何ですか」です。答えに「〜だけです」という言い方が出てきたら、そこに印をつけてください。断ったお客様の話や、仕様を選んだ理由にも、その会社の芯が出ます。
出てきた言葉は、行動として書き、お客様の得として書き直すと、読む人に届きます。目的は問い合わせの数を増やすことではなく、価値観の合うお客様の割合を上げることです。そうなれば、値引きや「言った言わない」で消耗する商談が減り、最初から対等に話せるお客様と家づくりができるようになります。
まずは今日、自社の施工写真を1枚開いて、「なぜこうしたんだっけ」と考えるところから始めてみてください。



